「聞いていた条件と違う」——でも、どう言えばいいのか
入ってみたら給料が低い、残業がない話だった、勤務地が違う。おかしいと思っても、切り出し方が分からず飲み込んでしまう人は多いです。
この記事では、会社への伝え方の例文、辞める場合の手順、そして次の面接で退職理由をどう説明するかまでをまとめます。条文と公的な取り扱いを確認したうえで書いています。
📖 この記事でわかること
- どこが違うのかを特定する方法と、証拠になるもの
- 会社に伝えるときの例文(口頭・メール)
- 条件が違う場合は2週間待たずに辞められる(労基法15条2項)
- 失業給付が有利になる「特定受給資格者」の扱い
- 面接で退職理由を聞かれたときの答え方と例文
✅ 先に結論
感情で訴えるより、書面のどこと、実際の何が、どう違うかを並べるほうが早く動きます。改善されないなら、労働基準法15条2項で即時に辞められる場合があり、失業給付でも有利に扱われます。
STEP1 証拠をそろえる
労働条件通知書・求人票・給与明細・シフト表
STEP2 書面で確認する
感情ではなく差分を示す。メールで残す
STEP3 改善がなければ
労基法15条2項で即時解除も可能
STEP4 辞めたあと
特定受給資格者として失業給付を申請
まず「どこが違うのか」を特定する

「話が違う」と感じても、伝えるときは具体的でないと動きません。項目ごとに、書面と実際を突き合わせます。
| 項目 | 突き合わせるもの | 証拠になるもの |
|---|---|---|
| 給与(基本給・手当) | 労働条件通知書の金額と、実際の支給額 | 通知書、給与明細、求人票 |
| 固定残業代 | 時間数・金額の記載と、実際の残業時間 | 通知書、勤怠記録、給与明細 |
| 勤務時間・休日 | 所定時間、休日数の記載と、実際のシフト | シフト表、タイムカード、勤怠システムの記録 |
| 勤務地 | 就業場所と「変更の範囲」の記載と、実際の配属 | 通知書、辞令、配属メール |
| 職種・業務内容 | 業務の内容と「変更の範囲」の記載と、実際の担当 | 通知書、業務指示のメール |
| 雇用形態・契約期間 | 正社員か有期か、更新上限の記載 | 通知書、雇用契約書 |
書面がない場合は、まず交付を求める
労働条件の明示は会社の義務です(労働基準法15条)。通知書も契約書もないなら、まず「労働条件通知書をください」と求めてください。
求人票しかない場合でも、求人票と実際の差は材料になります。スクリーンショットを残しておいてください。
記録は「日付つき」で残す
口頭のやり取りは後から争えません。確認した内容はメールで送り返す、面談の日時と相手と内容をメモに残す、といった形にしておきます。
自分が当事者として参加している会話を録音しておくことも、後で事実を示す材料になります。
会社に伝えるときの例文

目的は相手を責めることではなく、条件をそろえてもらうことです。差分と、希望する対応の2つだけを短く伝えます。
口頭で切り出すとき
給与が違う場合
「入社時にいただいた労働条件通知書では基本給が◯◯円と記載されていました。今月の明細が△△円だったのですが、どちらが正しいか確認させていただけますか」
勤務時間・休日が違う場合
「通知書では所定労働時間が◯時間、休日が△日となっていました。実際のシフトと差があるようなので、運用を教えていただけますか」
職種・勤務地が違う場合
「通知書に記載された業務(勤務地)と、現在の担当(配属)が異なっています。変更の範囲についてどう整理されているか確認させてください」
※「おかしくないですか」ではなく「どちらが正しいか確認させてください」と聞く形にすると、相手も答えやすくなります。
メールで残すとき(そのまま使えます)
件名:労働条件の確認のお願い
◯◯部 △△様
お疲れさまです。□□です。
入社時にいただいた労働条件通知書の記載と、実際の勤務条件に差があるようですので、確認させてください。
・通知書の記載:基本給◯◯円/所定労働時間◯時間/休日◯日
・実際:△△円/△時間/△日
認識違いでしたら申し訳ありません。どちらの条件で運用されるのか、ご回答いただけますと助かります。
よろしくお願いいたします。
伝える相手は、直属の上司より人事のほうが早いことがある
条件を決めているのは人事や経営側です。現場の上司に言っても「自分では決められない」で止まることがあります。
就業規則や労働条件通知書を出している部署に、直接確認するほうが話が早い場合があります。
改善されないとき|2週間待たずに辞められる

通常、退職は申し出から2週間が必要です(民法627条)。ただし条件が違う場合には、別の条文があります。
📖 労働基準法 第15条 2項・3項(労働条件の明示)
前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
使える場面
- 明示された条件と実際が違う
- 差が具体的に示せる(書面と実際)
- 転居を伴う採用なら帰郷旅費も請求できる
注意すること
- 「思っていたのと違う」だけでは足りない。明示との相違が前提
- 口頭の約束しかない場合は立証が難しい
- 即時解除を使う場合も、通知は書面かメールで残す
辞める前に、離職票の記載を意識しておく
退職の理由がどう記録されるかで、失業給付の扱いが変わります。会社が「自己都合」と書いた場合でも、実態が違えばハローワークで異議を申し立てられます。
そのために、条件の相違を示す資料を手元に残しておいてください。
円満に辞める手順や、引き止められたときの返し方は別記事にまとめています。

失業給付は有利になる|特定受給資格者の扱い

条件の相違が理由の離職は、ハローワークの区分で特定受給資格者に当たります。自己都合とは扱いが変わります。
ハローワークが示す特定受給資格者の範囲には、「労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者」が含まれています。
| 項目 | 一般の自己都合 | 特定受給資格者 |
|---|---|---|
| 給付制限 | 原則1か月(2025年4月から短縮) | なし |
| 必要な被保険者期間 | 離職前2年間に通算12か月以上 | 離職前1年間に通算6か月以上でも可 |
| 所定給付日数 | 年齢に関係なく90〜150日 | 年齢と被保険者期間に応じて手厚くなる |
| 国民健康保険 | 通常の保険料 | 前年の給与所得を30%とみなす軽減の対象 |
ポイントは「著しく相違」していること
どの程度の差なら該当するかは、ハローワークが個別に判断します。給与額や勤務地など、生活に直結する条件の食い違いは認められやすい部分です。
手続きのときに、労働条件通知書と実際の給与明細などを持参してください。
退職前に確認しておくこと
離職票が届いたら、離職理由の欄と、本人が記入する欄を必ず見てください。会社の記載に納得できない場合は、ハローワークで異議を伝えられます。
手続きに必要な資料(労働条件通知書、求人票、給与明細、勤怠記録)は、退職前にコピーしておくほうが確実です。退職後は社内システムに入れなくなります。
📚 出典:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」(明示された労働条件が事実と著しく相違したことによる離職を含む)、労働基準法第15条、民法第627条、2025年4月施行の雇用保険法改正(給付制限の短縮)、各市区町村の非自発的失業者に対する国民健康保険料軽減の案内。確認日 2026年9月21日。
退職後に受け取れるお金の全体像は、こちらで制度ごとに整理しています。

伝えたあと、実際どうなるか

指摘したら気まずくなるのでは、と心配になりますが、結果はだいたい3つに分かれます。
① 会社側のミスとして直る
- 計算間違い、手当の付け忘れ、書式の古さ
- 差額が精算されることもある
- いちばん多いパターン
② 運用が説明される(納得できるか次第)
- 「変更の範囲」に入っている、繁忙期だけ、などの説明
- 納得できるなら続ける判断もある
- 説明はメールでもらって残す
③ 取り合わない・態度が変わる
- 条件は直らず、指摘した側が居づらくなる
- この場合は辞める前提で動いたほうが早い
- 労基署への相談も並行して検討する
相談を理由にした不利益な扱いは禁止されている
労働基準法に違反する事実を労働基準監督署に申告したことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています(労働基準法104条2項)。
会社に相談した時点で態度が変わった、という事実も記録しておいてください。
我慢して続けるほど、選択肢は減る
条件が違うまま働き続けると、生活の計画が崩れるだけでなく、年齢が上がって転職の条件も変わります。
直るかどうかを見極める期限を、自分の中で決めておくと動きやすくなります。
面接で退職理由を聞かれたときの答え方

事実としては会社側に非があっても、言い方によっては「不満が多い人」と受け取られます。事実+短い+前向きな締めの3点で組み立てます。
避けたい言い方
- 「求人が嘘だった」「騙された」など感情的な表現
- 前職の批判が長い
- 条件面の不満だけで終わる
伝わる言い方
- 提示条件と実際の差を、事実として短く述べる
- 自分は確認や相談を試みたと添える
- 次の職場で何をしたいかで締める
そのまま使える例文
給与が違った場合
「入社時に提示された基本給と実際の支給額に差があり、人事にも確認しましたが調整が難しいとのことでした。条件面を整えたうえで長く働きたいと考え、転職を決めました」
職種・業務が違った場合
「提示された業務内容と実際の担当が異なり、経験を積みたい分野に関われない状況が続きました。御社では◯◯の経験を活かして取り組みたいと考えています」
勤務地が違った場合
「勤務地の条件が入社時の提示と異なり、家庭の事情と両立が難しくなりました。通勤圏で腰を据えて働きたいと考えています」
※在籍期間が短い場合は、聞かれる前に一言添えておくほうが印象は良くなります。伏せると、後で分かったときのほうが響きます。
短期離職は、事実を先に出したほうが軽くなる
「入社3か月で退職」という事実は履歴書に残ります。隠すより、条件の相違という理由を先に出したほうが、面接官の受け取り方は落ち着きます。
そのうえで、次は同じことが起きないよう何を確認して選んでいるかを話せると、納得されやすくなります。
そもそも求人票の嘘がどこから違法になるか、通報先も含めてはこちらです。

よくある質問

労働条件が違う場合、すぐ辞めても大丈夫ですか?
労働基準法15条2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。民法の2週間を待つ必要はありません。
ただし「明示された条件との相違」が前提です。書面と実際の差を示せるようにしてから動いてください。
口頭の説明と違う場合はどうなりますか?
口頭でも労働条件の明示にあたりますが、後から立証するのが難しくなります。
まずは労働条件通知書の交付を求め、書面で条件を確定させてください。やり取りはメールで残すのが確実です。
条件が違って辞めた場合、失業給付はどうなりますか?
ハローワークが示す特定受給資格者の範囲には「明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者」が含まれます。
該当すれば給付制限がなく、被保険者期間の要件も離職前1年間に6か月以上で足ります。判断はハローワークが行うため、資料を持参してください。
会社が離職票に「自己都合」と書いた場合は?
ハローワークの窓口で異議を申し立てられます。離職票には離職理由について本人が意見を記載する欄があります。
労働条件通知書、求人票、給与明細など、相違を示す資料を持って相談してください。
面接で前職の条件相違を話すと不利になりませんか?
伝え方次第です。感情的な批判ではなく、提示条件と実際の差を事実として短く述べ、次に何をしたいかで締めれば、マイナスにはなりにくいです。
短期離職は履歴書に残るため、隠すより先に触れるほうが落ち着いて受け取られます。
まとめ

✅ まとめ:感情ではなく「差分」で伝える
- まず書面と実際を項目ごとに突き合わせ、証拠をそろえる
- 伝えるのは「差分」と「どうしてほしいか」の2つだけ。メールで残す
- 改善されなければ、労基法15条2項で即時に辞められる場合がある
- 転居していれば、14日以内の帰郷なら旅費を会社が負担する
- 条件の相違による離職は特定受給資格者。給付制限なしで受けられる
- 面接では、事実を短く述べて次にやりたいことで締める
※この記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談ではありません。実際の判断は契約内容と事実関係によって変わります。困ったときは労働基準監督署、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、またはハローワークにご相談ください。
「違う」って言うのに、そこまで身構えんでもええんやな。









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