「普通免許だけで月収70万円」は本当なのか
軽貨物ドライバーの求人には、高い月収をうたう見出しがたくさん並んでいます。ところがその多くは業務委託で、書かれているのは「売上」です。車・燃料・保険・税金を引く前の金額です。
この記事では、実際の求人の中身と国の統計・制度をもとに、軽貨物ドライバーが稼げるのか、なぜ「やばい」と言われるのか、やってはいけない契約はどれかを整理します。
📖 この記事でわかること
- 雇用と業務委託で、稼ぎ方がまったく違うこと
- 雇用で働くドライバーの月収と年収(国の統計)
- 業務委託の売上から引かれるもの(計算例つき)
- 「やばい」と言われる理由と、2025年4月からの規制強化
- やってはいけない契約と、身を守るフリーランス新法
✅ 先に結論
求人サイトで「軽貨物」を探すと、上位の9割以上が業務委託でした。業務委託の月収○○万円は売上で、ここから車・燃料・保険・年金・税金を自分で払います。
安定を求めるなら、まず雇用(正社員)の求人から探してください。業務委託で始めるなら、車と保険の費用を先に計算し、契約条件を書面で受け取ってから決めます。
雇用なら
男性の運転者で月34.3万円(残業込み)。社会保険は会社と折半
業務委託なら
売上から車・燃料・保険・年金・税金を自分で払う。休めば収入ゼロ
やってはいけない
高額な車両リースや研修費を先に払わせる契約。条件を書面で出さない会社
月収70万って書いてあっても、それ売上やからな。そこから車も保険も年金も自分持ちや。
軽貨物ドライバーとは|雇用と業務委託の2つの働き方


軽貨物ドライバーは、軽バンや軽トラックで荷物を運ぶ仕事です。宅配の荷物、企業間の配送、スポット便などがあります。同じ仕事でも、働き方は大きく2つに分かれます。
雇用(正社員・アルバイト)
- 会社と雇用契約を結ぶ
- 給料は月給・日給・時給
- 車は会社のもの、燃料も会社持ちが多い
- 社会保険・雇用保険・労災は会社の制度
- 残業代が出る
業務委託(個人事業主)
- 運送会社から仕事を請け負う
- 報酬は1個いくら・1日いくらの出来高が多い
- 車・燃料・保険は自分で用意する
- 国民年金・国民健康保険に自分で加入
- 休めばその日の収入はない
求人の上位100件のうち、97件が業務委託だった
リクナビNEXTで「軽貨物」を検索し、関連度順の上位100件を数えました。業務委託が97件、そのうち「完全歩合制」が49件、「月収50〜70万円」などの高い金額を見出しに入れた求人が21件、車両のリースや貸し出しつきが11件でした。
「軽貨物の仕事」を探すと、自然と業務委託の求人ばかりが目に入る、ということです。
業務委託で始めるには、黒ナンバーの届出が必要
自分の軽自動車で荷物を運んで報酬を受け取るには、「貨物軽自動車運送事業」の届出をして、事業用の黒いナンバープレートを付ける必要があります。届出先は営業所の所在地を管轄する運輸支局です。
車両リースの会社や運送会社が、届出の手続きを代わりに行うこともあります。
📚 出典:求人の件数と内訳は、リクナビNEXTで「軽貨物」を検索した結果(2026年9月26日、関連度順の上位100件を筆者が集計)。
軽貨物の仕事の種類|宅配・企業配送・スポット便


同じ軽貨物でも、何を運ぶかで働き方と稼ぎ方が変わります。求人を見るときは、どの種類の仕事かを最初に確認してください。
宅配(個人宅への配達)
ネット通販の荷物などを個人の家に届けます。1日の件数が多く、1個いくらの出来高が多い仕事です。不在の再配達や時間指定で、1日の時間が長くなりやすい面があります。
企業間のルート配送
決まった取引先を決まった順番で回ります。件数が安定しやすく、日給や月給で決まっていることもあります。土日が休みの仕事も見つかります。
スポット便(チャーター便)
急ぎの荷物を1件ごとに運びます。距離や時間で報酬が決まり、1件の単価は高めですが、仕事の量は日によって変わります。
「1日何件・何時間」で比べる
出来高の宅配なら「1日何件で、何時から何時まで」、ルート配送なら「何社を回って、何時に終わるか」を聞いてください。同じ日給でも、拘束時間が違えば時給はまったく変わります。
荷物の重さと階段も確認する
水や家電など重い荷物が多い仕事、エレベーターのない建物への配達が多い地域もあります。体への負担は、会社の説明会や同行研修で実際に見てから判断してください。
雇用で働く場合の収入|国の統計で見る


まず、雇用で働くドライバーの賃金です。国の統計では、軽貨物だけを取り出した数字はないため、大型を除く営業用の貨物自動車の運転者の数字で見ます。
| 営業用貨物自動車運転者(大型を除く) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 月の給与(残業代込み) | 34.3万円 | 30.7万円 |
| うち基本の給与(所定内) | 28.8万円 | 26.2万円 |
| 年間の賞与 | 39.5万円 | 15.5万円 |
| 年収の目安(月の給与×12+賞与) | 約451万円 | 約384万円 |
| 月の残業時間 | 27時間 | 22時間 |
| 平均年齢 | 50.4歳 | 47.6歳 |
📚 出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種第7表(企業規模計・一般労働者)。年収の目安は筆者が月の給与×12+年間賞与で計算。2トントラックなど軽自動車以外の運転者も含む数字です。確認日 2026年9月26日。
月給には残業代が含まれている
男性の月の給与34.3万円のうち、基本の給与は28.8万円で、差の5.5万円は残業代などです。月27時間の残業が前提になっている数字として読んでください。
平均年齢は50歳前後。40代は若い側
働いている人の平均年齢は男性50.4歳です。40代で入っても、職場では若い側になります。年齢で門前払いされにくい職種のひとつです。


業務委託の「月収70万円」は売上|手取りを計算する


業務委託の求人に書かれた金額は、運送会社から受け取る報酬、つまり売上です。そこから自分で払うものを引いた残りが手取りになります。
| 自分で払うもの | 目安・考え方 |
|---|---|
| 車(リースや購入) | 新車リースなら月約1.9万円〜(例:箱バン.comの最安プラン) |
| 燃料 | 走行距離×燃料価格÷燃費。配送は1日の走行距離が長くなりやすい |
| 任意保険 | 事業用(黒ナンバー)は見積もりしだい。個人で入ると高くなりやすい |
| 軽自動車税 | 営業用の軽貨物は年3,800円(自家用は5,000円) |
| 国民年金 | 月17,920円(2026年度) |
| 国民健康保険・住民税・所得税 | 前年の所得と住んでいる市区町村で変わる |
| 駐車場・携帯電話・備品 | 荷物の積み下ろしの台車など |
📚 出典:国民年金保険料は日本年金機構(2026年度)、軽自動車税は総務省(平成27年4月以降に初めて登録した軽四輪貨物の標準税率)。車両の月額は箱バン.com公式(2026年9月26日確認)。
計算例:売上が月35万円だった場合(前提は下の注記)
手元に約23万円
ここからさらに国民健康保険・住民税・所得税を払います。休んだ日の売上はありません
【計算の前提(すべて仮定)】売上35万円から、車両リース月2.1万円、燃料 月2,000km÷燃費15km/L×170円=約2.3万円、任意保険 月1.5万円、国民年金1.8万円、駐車場・携帯など1.5万円を引いて約23.8万円。任意保険や燃料は条件で大きく変わります。自分の条件で計算し直してください。
「月収○○万円可能」は、上の方の人の売上
求人の見出しの金額は、長時間働く人や、慣れて件数をこなせる人の例であることがほとんどです。応募前に、「その金額は売上か手取りか」「何時間・何日働いた場合か」「最初の3か月の平均はいくらか」を聞いてください。
会社員との違いは、社会保険と休業の保障
雇用なら、厚生年金と健康保険の保険料は会社と半分ずつです。業務委託では国民年金・国民健康保険を全額自分で払い、ケガや病気で休んでも、会社員のような傷病手当金はありません。
売上が同じくらいでも、会社員の月給と比べるなら、この差を引いて考えてください。
業務委託で始めるなら|車と保険は自分で選ぶ


業務委託の軽貨物では、車を運送会社からリースするよう勧められることがあります。条件が悪い場合もあるので、自分で選ぶ選択肢も知っておいてください。
「やばい」と言われる理由|事故の増加と2025年の規制強化


軽貨物が「やばい」と言われる理由のひとつは、事故です。国は2025年4月から、軽貨物の事業者への安全対策を大きく強化しました。
事業用軽自動車の死亡・重傷事故(保有1万台あたり、2016年→2023年)
約4割増
ほかの事業用トラックが減っているなかで、軽貨物だけが増えていました
2025年4月から義務になったこと
営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選んで講習を受けさせること、業務記録と事故記録の作成・保存、一定の事故の国への報告、初めて運転する人・65歳以上・事故を起こした人への指導と適性診断が義務になりました。
個人事業主として1人で始める場合も対象です。自分が安全管理者として講習を受けることになります。
長時間・多件数が事故につながる
出来高制では、件数をこなすほど売上が増えます。そのぶん急いで運転しがちになり、事故の危険が高まります。売上だけでなく、1日に何時間運転する前提なのかを必ず確認してください。
📚 出典:国土交通省「貨物軽自動車運送事業における安全対策を強化するための制度改正について」(2025年4月施行)。確認日 2026年9月26日。
業務委託は確定申告が必要|経費とインボイス


業務委託で働くと、税金の計算は自分で行います。最初の年に慌てないよう、仕組みだけは先に押さえてください。
売上から経費を引いた「所得」に税金がかかる
燃料代、車のリース料や減価償却、任意保険料、駐車場代、仕事用の携帯電話代などは、仕事に使った分を経費にできます。売上から経費を引いた所得をもとに、所得税や住民税、国民健康保険料が決まります。
レシートや明細は日付ごとに保管し、帳簿をつけてください。
青色申告にすると、最大65万円の控除がある
事前に税務署へ届け出て青色申告にすると、帳簿のつけ方などの条件を満たせば、所得から最大65万円を差し引ける控除があります(電子申告などの要件あり)。会計ソフトを使えば、個人でも対応できます。
インボイスの登録を求められることがある
2023年10月からインボイス制度が始まり、取引先の運送会社から、適格請求書発行事業者の登録を求められることがあります。登録すると消費税の申告と納税が必要になります。
登録しない場合に報酬が変わるかどうかも含めて、契約前に確認してください。
📚 出典:国税庁「青色申告特別控除」「インボイス制度の概要」。確認日 2026年9月26日。
やってはいけない契約の見分け方


軽貨物の業務委託では、契約の中身で損をするケースがあります。次の3つに当てはまる募集は避けてください。
高額な車両リースが条件になっている
仕事を始める条件として、相場より高いリースを組ませる募集があります。仕事が減っても、リース料と解約金は残ります。
研修費・登録料を先に払わせる
働く前にお金を払わせる募集は注意が必要です。何の費用で、返金されるのかを書面で確認してください。
条件を書面で出さない
報酬の額、支払日、仕事の内容を書面やメールで示さない会社は避けてください。後で「聞いていない」となっても証拠が残りません。
フリーランス新法で、発注する側に義務がある
2024年11月に施行されたフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)で、仕事を発注する会社には、報酬の額・支払期日・仕事の内容などを書面やメールで明示することが義務づけられました。
報酬は原則として受け取りから60日以内に支払うこと、不当な減額や買いたたきの禁止、募集情報を正確に表示すること、一定期間続く契約を途中で解除するときは30日前に予告すること、なども定められています。
困ったときの相談先
報酬の未払いや一方的な減額などで困ったら、国が設けている「フリーランス・トラブル110番」で無料で相談できます。契約の書面やメッセージのやり取りは、必ず残しておいてください。
📚 出典:公正取引委員会・厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(2024年11月1日施行)。確認日 2026年9月26日。
向いている人・向いていない人


向いている人
- 運転が好きで、一人で黙々と働くのが苦にならない
- 体力に自信があり、荷物の積み下ろしができる
- 売上と経費を自分で管理できる(業務委託の場合)
- まず雇用で経験を積んでから独立を考えられる
向いていない人
- 毎月決まった収入がないと不安
- 長時間の運転や、時間に追われる仕事が苦手
- 確定申告などの手続きが面倒
- 車のリース代を払い続ける余裕がない


よくある質問


業務委託で働いたら確定申告は必要ですか?
必要です。売上から燃料代・車両費・保険料などの経費を引いた所得に税金がかかります。事前に届け出て青色申告にすると、条件を満たせば最大65万円の控除を受けられます。取引先からインボイスの登録を求められることもあるので、契約前に確認してください。
軽貨物ドライバーは本当に稼げますか?
働き方によります。雇用なら、大型を除く営業用の貨物自動車の運転者は男性で月34.3万円(残業込み)、年収の目安は約451万円です。業務委託の「月収○○万円」は売上で、車・燃料・保険・国民年金・税金を自分で払った残りが手取りになります。
軽貨物が「やばい」「やめとけ」と言われるのはなぜですか?
出来高制で長時間働きがちなこと、車両リースなどで費用がかさむこと、事故が増えていることが主な理由です。事業用軽自動車の死亡・重傷事故は2016年から2023年で約4割増え、国は2025年4月から安全対策を強化しました。
未経験でもできますか?
普通自動車免許(AT限定可)で応募できる求人が多くあります。ただし業務委託で始めるなら、黒ナンバーの届出、安全管理者の講習、車と保険の準備が必要です。まず雇用で経験を積むほうが安全です。
業務委託で始めるのに、いくらかかりますか?
車を新車リースする場合は月約1.9万円からが目安です(箱バン.comの最安プラン)。ほかに任意保険、燃料、国民年金(月17,920円)などがかかります。リースは途中解約すると残りの料金とほぼ同額の解約金がかかる場合があるので、条件を確認してください。
報酬が払われないときはどうすればいいですか?
フリーランス新法で、発注する会社には報酬を原則60日以内に支払う義務があります。書面ややり取りを残したうえで、国の「フリーランス・トラブル110番」に無料で相談できます。
まとめ


✅ まとめ
- 軽貨物の求人は業務委託が大半。リクナビNEXTの上位100件中97件
- 雇用なら男性で月34.3万円(残業込み)、年収目安約451万円
- 業務委託の「月収○○万円」は売上。車・燃料・保険・年金・税金を自分で払う
- 事業用軽自動車の死亡・重傷事故は約4割増。2025年4月から安全対策が義務化
- 高額リースや先払いを求める契約は避け、条件は書面でもらう(フリーランス新法)
まずは雇用で経験してから、業務委託を考えても遅くありません。









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