「みんな転職してる」って、本当なんでしょうか。
SNSを開けば転職report、会社では同期が次々と辞めていく。取り残されている気がして焦る——その感覚、数字で確かめると景色が変わります。
厚生労働省の調査では、1年間で会社を変えた人の割合は9.7%。およそ10人に1人です。一方で「転職したい」と思っている人は1,023万人います。
この記事では、日本の転職率を公的統計だけで整理し、年代別にどう変わるのか、そして「思っている人」と「実際に動いた人」の差がどこにあるのかを解説します。
📖 この記事でわかること
- 日本の転職率(転職入職率)の最新値と、この10年の推移
- 年代別の転職率=何歳から動く人が減るのか
- 「転職したい人1,023万人」と「実際に転職した330万人」の差
- 転職した人の給料は上がったのか、下がったのか(年代別)
- この数字を自分の判断にどう使うか
日本の転職率は9.7%|まず全体の数字を押さえる

「転職率」と呼ばれる数字にはいくつか種類があり、話し手によって指しているものが違います。まずは公的統計での定義から整理します。
「転職入職率」=1年間に転職で入ってきた人の割合
厚生労働省の雇用動向調査では、その年の初めにいた常用労働者の数に対して、1年間に「前の職場から移ってきた人」が何%入ったかを転職入職率と呼びます。
令和6年(2024年)の転職入職率は9.7%でした。人数にすると約492万人です。同じ調査で入職率全体は14.8%なので、入ってきた人の3分の2ほどが転職組、残りの5.0%分が新卒や再就職といった内訳になります。
前年の10.4%から0.7ポイント下がった
2023年の転職入職率は10.4%で、2024年はそこから0.7ポイント低下しています。入職率も離職率も同時に下がっており、人の動き自体が前年よりおとなしくなった1年でした。
「転職ブーム」という言葉の印象とは、少しずれた結果です。数字の上では、2024年は転職が加速した年ではありません。
「転職者330万人」はまた別の調査の数字
ニュースでよく見る「転職者◯万人」は、総務省の労働力調査から来ています。2025年平均で330万人、前年から1万人の減少で、4年ぶりに減りました。
労働力調査の転職者330万人を就業者6,820万人で割ると約4.8%で、雇用動向調査の9.7%とは開きがあります。雇用動向調査(事業所に聞く調査)と労働力調査(世帯に聞く調査)は集計の対象も方法も違うので、数字が合わなくても矛盾ではありません。割合を見たいときは雇用動向調査、人数の規模感を見たいときは労働力調査、と使い分けるのが安全です。
転職者数はこの10年、300万人前後で動いている
労働力調査の転職者数は、2019年の353万人がこの10年のピークでした。コロナ禍の2021年に290万人まで落ち込み、その後は303万人→328万人→331万人→330万人と回復しています。
つまり「昔より劇的に転職が増えた」わけではなく、300万人台で行き来しているのが実態です。増えているのは、次に見る「したいと思っている人」のほうです。
| 年 | 転職者数 | 転職等希望者数 |
|---|---|---|
| 2015年 | 299万人 | 812万人 |
| 2019年 | 353万人 | 848万人 |
| 2021年 | 290万人 | 897万人 |
| 2023年 | 328万人 | 1,007万人 |
| 2024年 | 331万人 | 1,000万人 |
| 2025年 | 330万人 | 1,023万人 |
年代別の転職率|何歳から人は動かなくなるのか

全体の9.7%という数字は、年代でならすとほとんど意味を持ちません。20代と50代では3倍近い差があり、男女でも向きが違います。
10人に1人か。でもこれ、全世代を混ぜた数字なんだよね?
そう。20代と50代で3倍近く違うし、男女でも逆を向くから、平均だけ見ても自分の話にはならないよ。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 19歳以下 | 20.8% | 20.4% |
| 20〜24歳 | 13.4% | 14.3% |
| 25〜29歳 | 15.1% | 16.8% |
| 30〜34歳 | 10.3% | 13.2% |
| 35〜39歳 | 7.9% | 10.5% |
| 40〜44歳 | 6.8% | 10.2% |
| 45〜49歳 | 6.0% | 10.7% |
| 50〜54歳 | 5.1% | 8.2% |
| 55〜59歳 | 5.4% | 7.6% |
| 60〜64歳 | 10.0% | 7.7% |
| 65歳以上 | 10.1% | 6.5% |
ピークは25〜29歳|10代を除けばここが最も動く
19歳以下は母数が小さくアルバイト的な移動を多く含むため、実質的なピークは25〜29歳(女性16.8%・男性15.1%)です。6人に1人が1年で会社を変えている計算になります。
面白いのは、20〜24歳(女性14.3%・男性13.4%)より25〜29歳のほうが高いことです。新卒3年目前後の「一度目の見切り」より、社会人5〜7年目の「経験を持って動く転職」のほうが多い、という形になっています。
30代で失速し、35歳で1割を割る(男性)
30〜34歳で男性10.3%・女性13.2%、35〜39歳で男性7.9%・女性10.5%。男性は35歳で1割を割り、落ち方が最も急なのは30代前半から後半にかけてです。
住宅ローン、子どもの学齢、社内での役職——動かない理由が一気に増える時期と重なります。「35歳転職限界説」はもう古いと言われますが、男性で実際に動く人の割合が減るのは事実です。ただしこれは「できない」ではなく「しない」を含んだ数字である点は押さえておきたいところです。
40代で高止まりするのは女性のほう
女性は35〜39歳10.5%→40〜44歳10.2%→45〜49歳10.7%と、40代の間はほぼ横ばいで、45歳以降にわずかに戻ります。「40代で転職市場から締め出される」という通説とは違う動きです。
一方で男性は35〜39歳7.9%→40〜44歳6.8%→45〜49歳6.0%と下がり続けます。40代で動いているのは男性より女性、というのがこの表から読み取れる一番大きな違いです。非正規やパートでの移動が多く含まれる点は割り引く必要がありますが、方向としてははっきりしています。
60歳を境に、今度は男性が女性を追い越す
50代まで女性が上回っていたのに、60〜64歳で男性10.0%・女性7.7%、65歳以上で男性10.1%・女性6.5%とシニア層では逆転します。男性は45〜49歳の6.0%から60〜64歳の10.0%へ跳ね上がる形です。
定年や再雇用にともなう移動が、この年代でまとめて数えられているためとみられます。また同じ調査を就業形態別に見ると、パートタイム労働者の転職入職率は一般労働者より軒並み高くなっています。年代別の数字を見るときは、正社員だけの動きではないことを頭に置く必要があります。
転職したい人1,023万人、実際に転職した人330万人


この記事でいちばん見てほしいのがこのギャップです。転職率が低いのは、みんなが今の会社に満足しているからではありません。
⚖️ 「したい」と「した」の差
転職等希望者
1,023万人
実際の転職者
330万人
希望していた人のうち、その年に実際に移った人はおよそ3割。残りの約690万人は、思いながら1年を終えています。
700万人近くが「したいのにできてない」って、けっこう衝撃だなあ。
意欲の問題じゃなくて、単に段取りを組む余力がないだけの人も多いと思うよ。
希望者は過去最多を更新し続けている
転職等希望者は2015年の812万人から増え続け、2022年に968万人、2023年に1,007万人と初めて1,000万人を超え、2025年は1,023万人で過去最多水準です。
就業者は約6,820万人なので、働いている人の7人に1人が「今の仕事を変えたい」と答えていることになります。男性514万人・女性509万人と、男女差はほとんどありません。
増えているのは希望者だけ、実行者は増えていない
2015年から2025年の10年で、希望者は812万人→1,023万人と211万人増えました。同じ期間の転職者は299万人→330万人で、増加は31万人です。
希望が7倍のペースで積み上がっているのに、実行はほとんど動いていません。転職市場が語られるときの熱量と、実際に人が移動している量には、かなりの温度差があります。
「動けない」の中身は、たいてい情報と体力の問題
筆者自身、適応障害で休職したあと退職・転職を経験しましたが、いちばん時間を取られたのは「求人を探すこと」ではなく手続きと制度の把握でした。離職票、健康保険、年金、失業給付。調べるだけで数日かかります。
そして心身が削れている状態では、その数日が確保できません。希望者と実行者の690万人の差には、意欲の問題ではなく単純に段取りを組む余力がない人がかなり含まれているはずだ、というのが実感です。
逆に「同じ会社に居続けている人」がどれくらいいるかは、別の記事で勤続年数から検証しています。


だから「転職率が低い=転職しないほうがいい」ではない
9.7%という数字を見て「やっぱりみんな動いていないんだ」と安心するのは、読み方としてもったいないです。
正しくは「動いた人は10人に1人、動きたい人は7人に1人」。この2つを並べたとき、自分がどちらの側にいて、なぜそこに留まっているのかを言葉にできるかどうかが、次の1年を分けます。
転職理由のランキングと、面接での伝え方は別の記事で詳しくまとめています。


転職率の中身|人はどんな理由で会社を出ているのか


実際に動いた人が挙げた理由も、同じ雇用動向調査で公表されています。男女で1位が違うのが特徴です。
| 前職を辞めた理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 労働時間・休日等の労働条件が悪かった | 8.6% | 12.8% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 9.0% | 11.7% |
| 給料等収入が少なかった | 10.1% | 8.3% |
| 会社の将来が不安だった | 7.4% | 5.1% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 4.4% | 3.6% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 3.8% | 3.7% |
男性は「給料」、女性は「労働時間」が1位
男性のトップは給料等収入が少なかった(10.1%)、女性のトップは労働時間・休日等の労働条件が悪かった(12.8%)です。
人間関係は男性9.0%・女性11.7%で、男女ともに2位前後に入ります。お金・時間・人間関係の3つで、実質的な理由の大半を占めていると言っていい構成です。
伸び幅トップは男性の「会社の将来が不安だった」
前年からの上昇幅が最も大きかったのは、男性が会社の将来が不安だった(+2.2ポイント)、女性が労働時間・休日等の労働条件が悪かった(+1.7ポイント)でした。
逆に「仕事の内容に興味を持てなかった」は男性で2.6ポイント減っています。今いる場所への不満より、この会社に居続けて大丈夫かという先の不安が動機に変わってきている、と読める変化です。
年代別に見ると理由の顔つきが変わる
25〜29歳男性は「給料等収入が少なかった」が16.9%と突出します。40〜44歳男性は「職場の人間関係」が16.0%で最多になり、40〜44歳女性は「介護・看護」が8.1%まで上がります。
全体平均だけを見て「今どきの転職理由は給料」とまとめると、自分の年代の実像を取り逃がします。自分の年齢階級の行を見るのが正解です。
転職した人の給料は上がったのか|40.5%が「増えた」


転職率とセットで見ておきたいのが、動いた結果どうなったかです。ここは近年はっきり改善しています。
✅ 増えた側
- 賃金が増加:40.5%
- うち1割以上の増加:29.4%
- 10年前(2015年)は35.6%
❌ 減った側
- 賃金が減少:29.4%
- うち1割以上の減少:21.7%
- 変わらない:28.4%
「増えた」が過去10年で最も高い水準
賃金が増加した人の割合は2015年35.6%、2023年37.2%、そして2024年に40.5%と、この10年でいちばん高くなりました。減少した人は29.4%で、増加が減少を11.1ポイント上回っています。
2015年時点では増加35.6%・減少33.5%とほぼ拮抗していたので、「転職すると給料が下がる」という前提はここ数年で崩れたと言えます。
40代までは「増えた」が優勢を保つ
賃金が増加した人の割合を年代別に見ると、20〜24歳50.5%、25〜29歳46.3%、30〜34歳46.1%、35〜39歳45.5%、40〜44歳45.9%、45〜49歳46.4%。
45〜49歳は増加と減少の差が+22.6ポイントあり、実は20代後半(+17.1ポイント)より条件がいい結果になっています。40代後半=不利、とは言い切れません。
ここから先は数字の意味が変わるから、年代を確認してから読んでね。
逆転するのは55歳から|60代前半は-47.3ポイント
50〜54歳までは増加が優勢(+10.8ポイント)ですが、55〜59歳で-9.2ポイント、60〜64歳で-47.3ポイントと一気に逆転します。60〜64歳では「増えた」が13.6%しかなく、「1割以上減った」が53.9%です。
定年・再雇用にともなう条件の切り替えが数字に出ているので、純粋な転職の結果とは言い切れません。ただし55歳を過ぎてからの移動は、賃金が下がる前提で組み立てるのが現実的です。
ただし平均は自分の結果を保証しない
40.5%が増えたということは、約6割は増えていないということでもあります。減った人が29.4%、変わらない人が28.4%です。
統計は「そういう人が一定数いる」ことしか教えてくれません。自分の場合どうなるかは、応募先の提示額を見て判断するしかない——という当たり前の結論に、最後は戻ります。
この数字を自分の判断にどう使うか


統計はあくまで背景です。数字を見たあとに何をするかで、意味が変わります。
焦りの材料にはしない
「1,023万人が転職を考えている」は、裏を返せば5,800万人は考えていないということです。どちらの数字を見ても、自分の状況は1ミリも変わりません。
統計で決められるのは「自分の感覚が特殊なのか、よくあることなのか」だけです。人間関係で辞めたいと思っているなら、それは男性の9.0%・女性の11.7%が実際に選んだ理由であって、甘えではありません。
自分の年齢階級の行だけを見る
全体平均(転職率9.7%・賃金増加40.5%)は、20代から60代までを混ぜた数字です。判断材料にするなら、この記事の表から自分の年齢階級の行だけを抜き出してください。
たとえば45〜49歳女性なら転職率10.7%、45〜49歳男性なら6.0%。賃金は男女計で増加46.4%・増減差+22.6ポイントと全年代で最良です。動く人の割合と、動いた結果の条件は別物なので、2つを分けて見てください。
「動けない690万人」に入り続けないための最小の一歩
希望者と実行者の差を埋めるのは、決意ではなく段取りです。求人を探す前に、離職票・健康保険・年金・失業給付の4つで自分が何をすることになるのかを、紙1枚に書き出すだけでも詰まりはかなり減ります。
体調を崩している状態なら、順番はさらに前です。まず休むこと、次に制度を確認すること、求人はそのあと。この順番を逆にすると、たいてい途中で止まります。
40代以降の年齢の壁が実際どこにあるのかは、氷河期世代の記事で詳しく扱っています。


給料が実質的に増えているのかは、物価と合わせて見る必要があります。


よくある質問


日本の転職率は結局、何%と言えばいいですか?
公的統計で答えるなら「厚生労働省の令和6年雇用動向調査で、転職入職率9.7%」が最も無難です。
人数で言うなら「総務省の労働力調査で、2025年平均の転職者数330万人」になります。調査が違うので数字が一致しませんが、どちらも正しい数字です。
日本の転職率は海外より低いのですか?
「日本は低い」とよく言われますが、国ごとに調査の定義(勤続年数の数え方、パートの扱い、対象年齢)が違うため、単純比較には注意が必要です。
この記事では確認できる国際比較の一次資料に当たれていないため、具体的な数値の比較は行っていません。国内の推移で見る限り、転職者数は300万人台で大きくは変わっていません。
40代で転職するのは、やはり無謀でしょうか?
データ上は一概に厳しいとは言えません。転職入職率で40代に横ばいが見られるのは女性のほうで、40〜44歳10.2%・45〜49歳10.7%と35〜39歳(10.5%)から落ちていません。男性は35〜39歳7.9%→45〜49歳6.0%と下がり続けます。
ただし賃金面では45〜49歳(男女計)が「増えた」46.4%で、増加が減少を22.6ポイント上回り全年代で最良でした。動く人の割合と、動いた結果の条件は別に見る必要があります。
転職すると給料は下がるのではないですか?
2024年は「増えた」40.5%に対して「減った」29.4%で、増えた人のほうが11.1ポイント多い結果でした。増加した人の割合は過去10年で最も高い水準です。
ただし6割は増えていないこと、55歳以降は減少が上回ることも同じ調査に出ています。年代によって前提が変わる、というのが正確な答えになります。
「転職等希望者」には、副業したい人も含まれますか?
含まれます。労働力調査の定義では、転職等希望者とは「現在の仕事を辞めてほかの仕事に変わりたいと希望している者」に加えて「現在の仕事のほかに別の仕事もしたいと希望している者」も対象です。
1,023万人という数字は、転職希望と副業希望を合わせたものである点に注意してください。
数字は背中を押すためじゃなくて、自分の感覚が変じゃないと確かめるために使うのがいいね。
まとめ


✅ まとめ:日本の転職率のポイント
- 2024年の転職入職率は9.7%。1年で会社を変えるのはおよそ10人に1人
- ピークは25〜29歳(女16.8%・男15.1%)。男性は30代以降に落ち続ける
- 40代で高止まりするのは女性(45〜49歳10.7%)、男性は下がり続ける(同6.0%)
- 転職したい人は1,023万人。実際に動いたのは330万人=約3割
- 辞めた理由は男性「給料」、女性「労働時間」。伸び幅トップは「会社の将来が不安」
- 賃金が増えた人は40.5%で過去10年最高。ただし55歳以降は逆転する
- 全体平均ではなく、自分の年齢階級の行を見て判断する
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」/総務省「労働力調査(詳細集計)2025年平均」。確認日 2026年9月13日。統計の数値は調査年ごとに更新されます。






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